耳鼻科における真菌感染症-外耳道、副鼻腔炎-

耳鼻科における真菌(カビ)の感染症。外耳道真菌症、真菌性副鼻腔炎などありますが、簡単にまとめてみました。

まず、真菌は糸状菌と酵母に分けられます。糸状菌は菌糸状の真菌で長い1本の菌糸が分岐しながら増殖するもので、酵母は丸く単細胞性で出芽や分裂によって増殖するものです。

糸状菌にはアスペルギルス(Aspergillus)、白癬(Trichophyton)、ムコール(Mucor)などがあり、

酵母にはカンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)などがあります。

採血で細胞壁の成分であるβ-Dグルカンというものが上昇することが多いですが、非侵襲性病変(食道カンジダなど)やクリプトコッカスでは上昇しません。

 

治療薬は以下のようなものが使われます。

(病気がみえる 免疫・膠原病・感染症 より)

 

耳鼻科領域では副鼻腔炎、外耳炎などに真菌が関与することがあります。

真菌性副鼻腔炎の分類は以下のようになっています。

組織に浸潤して致命的になる浸潤性の副鼻腔炎は免疫が落ちている患者に起きやすいことが知られています。また非浸潤性のものは割合が髙く片側に起きることが多いです。癌や歯性副鼻腔炎との鑑別が大切になります。

またアレルギー性真菌性副鼻腔炎(AFRS)の診断基準です。真菌を認めるものの,浸潤性の副鼻腔真菌症のように鼻副鼻腔粘膜への浸潤を認めない点が AFRS の特徴です。

治療も侵襲性では、薬物療法も行いますが、非侵襲性では真菌の除去だけで抗真菌薬は使いません。以下侵襲性アスペルギルス症のフローチャートです。

(深在性真菌症の診断・治療ガイドライン より)

 

外耳炎に関しては、外耳道真菌症で白色粥状などの耳漏が出てくることがあります。糖尿病、免疫不全、ステロイド長期使用中の人などがなりやすいです。

まずは徹底的に洗浄、そして、お薬を使うときもあります。

耳鼻科で処置方法を教えてもらいましょう。

 

参考にガイドライン紹介。

深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014 深在性真菌症のガイドライン作成委員会

以下は2007年度ver。

第1章 深在性真菌症の診断と 治療のフローチャート        耳鼻科分野はP28-29

第2章 深在性真菌症の疫学、 診断法および治療戦略

第3章 深在性真菌症の診断と治療 のフローチャート解説  耳鼻科分野はP118-120

一般医療従事者のための深在性真菌症に対する抗真菌薬使用ガイドライン 日本化学療法学会

遺伝性血管性浮腫(HAE)-え?すごく腫れてる-

耳鼻科診察をしているとまぶたや口びるなどが腫脹している患者さんに会いますよね。

他にも腸がむくんだり、手足がむくんだり、場合によっては、喉がむくんで(喉頭浮腫)、気管切開の緊急手術が必要になることがあります。

血管性浮腫にも色々な種類があります。

血管性浮腫:ドイツの医師クインケが報告したクインケ浮腫ですが、その中にはアレルギー性のもの、高血圧の薬(アンギオテンシン変換酵素阻害薬)によるもの、物理的刺激などありますが、今回は、遺伝性のものについて、まとめてみます。

   (HAE情報センターホームページより)

まずはガイドラインから。日本補体学会が2014年に出したガイドライン。

遺伝性血管性浮腫 (HAE) ガイドライン(改訂 2014 年版) 日本補体学会

 

HAEには3つのタイプがあります

・ I型(HAE全体の85%)常染色体優性遺伝
C1インヒビタータンパク量低値、C1インヒビター活性低値

・ II型(HAE全体の15%)常染色体優性遺伝
C1インヒビタータンパク量正常または上昇、C1インヒビター活性低値

・ III型(稀)エストロゲン依存性、ほとんど女性に発症、病態の詳細は不明であるが、一部には凝固第XII因子の変異を認める。
C1インヒビタータンパク量正常、C1インヒビター活性正常

※家族歴のない孤発例は、HAE全体の約25%に認められているらしいです。

診断のアルゴリズムは以下のよう。

 

(堀内孝彦著「今日の診療サポート」エルゼビア・ジャパン社 より抜粋)

 

C4、C1インヒビター活性でスクリーニングし、

C1インヒビター定量でⅠ型(低値)、Ⅱ型(正常)を鑑別します。

また、後天性血管性浮腫との鑑別は難しいとされていますが、C1qが低値なら後天性血管性浮腫といわれています。※ただし、遺伝性のものでも低値を示すことがある。

そのため、確定診断のためには遺伝子検査をという流れです。

 

治療にはトラネキサム酸、C1インヒビター補充療法(ベリナート)というものなどがあります。

喉頭浮腫で気管切開になる例もあるので本当に注意して下さい。

 

 

こんなサイトもあるみたいです。

医療者向け→  

一般向け→   

 

それでは。

術後抗生剤-抗生剤って何をどれくらい使えばいいの?-

耳鼻咽喉科の手術後にどんな抗生剤を使えばいいんだろう、どれくらいの時間使えばいいんだろうと悩むこと有りますよね。

日本化学療法学会&日本外科感染症学会から発表された指針の耳鼻科の分野をピックアップします。

術後感染予防抗菌薬使用のための実践ガイドライン

このガイドラインの中で耳鼻科の分野を示します。

ほとんどが、セファゾリンでいけますね。

ちなみに創分類はこのガイドラインではこのようになっています。

それでは。

 

亜急性甲状腺炎

耳鼻科でたまに遭遇する疾患。

30歳以上の女性に多く、原因は不明。ウイルスが原因とも言われている。

症状

発熱、有痛性の硬結、圧痛。硬結は甲状腺内を移動する。

検査

採血:赤沈高値、CRP高値、WBC正常、T3・T4の上昇、TSHの低下、Tgの上昇

超音波:境界不明瞭な低エコー

甲状腺シンチ:I摂取率の激減

治療

多くは3ヶ月以内に改善する。

抗炎症剤(ロキソニンなど)、ステロイドなどを用いる。

動悸などが出る場合にはβ遮断薬(インデラルなど)を用いる。

 

甲状腺(喉仏の下あたり)の痛みを感じたら要注意。

 

参考に・・・

 

甲状腺腫瘍腫瘍診療ガイドライン 2010年度版   日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会

甲状腺癌取扱い規約 第7版 2015年 日本甲状腺外科学会

甲状腺結節取扱い診療ガイドライン 2013 日本甲状腺学会

 

UICC(Union for International Cancer Control)は2017年に第8版が発表され、新しくなっている。甲状腺乳頭癌の分類が45歳から55歳へと変更となっていたりするので、一度ご確認を。

それでは。

鼻・副鼻腔手術

耳鼻咽喉科でよく行われる鼻・副鼻腔手術をまとめました。

鼻づまりを治すため、鼻のなかの鼻中隔というところの曲がりを治す手術。

慢性的な副鼻腔炎などを治す手術などありますが、一般的なものを紹介します。

まずは鼻の解剖について説明します。

副鼻腔には4つの部屋があって、ほっぺに痛みがあったり、重い感じがする時は上顎洞に膿がたまっているかもしれません。

 

手術中に使う器械です。

たくさん種種ありますが、部位によって使い分けていきます。

 

次に手術に関して簡単に説明します。

以上が一般的なものです。

今は内視鏡などが発達して鼻の穴から手術できて傷が残りません。

 

他の亜型などはまた今度。

味覚障害

外来で、「味がしないんです、いつもと味覚が違います、、、」という主訴で来院される方がいます。

味覚障害の可能性があります。

食事は人生の楽しみの一つ!!しっかり治したいですよね。

頭部外傷が原因でなる場合などありますが、今回、耳鼻咽喉科領域の低亜鉛血症を中心についてまとめてみます。

 

まずは診断基準を見てみましょう。

 

3大原因:特発性、亜鉛欠乏症、薬剤性  

他にも感冒罹患後、全身疾患によるもの、鉄欠乏、手術後(鼓室形成術、扁摘、喉頭微細手術)、心因性、口腔・唾液性疾患、中枢神経障害など

 

日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針」において、基準80-130μg/dlとすることが適切であり、60-80μg/dlを潜在性亜鉛欠乏、60μg/dl未満を亜鉛欠乏としています。

この中で鉄欠乏性、心因性、外傷性を除き、50-70%が亜鉛不足(血清亜鉛濃度≦70μg)であったことが示されております。

阪上 医学のあゆみ 2005;214(49:275-279

 

日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針」

 

 

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つまり亜鉛欠乏が多いってことです。すごい割合です。

採血で亜鉛がどれくらい体内にあるのかチェックしましょう。

 

他の検査はどういうのがあるのかというと・・・

電気味覚検査法

濾紙ディスク法

 

このような検査を組み合わせて調べることもあります。

 

治療としては亜鉛剤(プロマック、ノベルジンなど)の補給、漢方(補中益気湯、十全大補湯、八味地黄丸、五苓散など)を行います。

 

まれな病気として、ビタミンB12吸収障害によるHunter舌炎、特発性肥厚性硬膜円、Cronkheit-Canada病、ベーチェット病などの可能性もあるので、病院を受診しましょう。

 

重篤副作用疾患別マニュアル-薬物性味覚障害-(案) 参考にどうぞ。

味覚障害を起こす薬物など載っています。

それでは。

耳鼻科のよくある手術 for看護師

第二弾病棟勉強会。

耳鼻科でよく行われる手術の簡単な説明、病棟での様子・管理をまとめてみました。

看護師さん向け。

 

全体的なイメージが付くと思います。

他にも頸部の癌の手術、皮弁を使った大掛かりな手術もありますが、それはまた次回に。

 

耳鼻咽喉科が扱う領域ってすごくたくさんあるんです。

首から上で眼と脳以外!!!

よくある手術を9個ほど簡単に説明します。

①口蓋扁桃摘出術

何回も扁桃炎を繰り返している人などに行います。

 

本当に出血が怖いです。注意して経過見ていきます。

②鼻手術 こちらで詳しくまとめています。

③リンパ節摘出・生検

リンパ節の腫れの原因を調べたりするのに一部取ってきたりします。

④ラリンゴマイクロサージェリー(LMS)

よく声をだす人(幼稚園の先生、歌手など)などポリープが出来た時の切除、また癌などの生検を行います。

⑤唾液腺手術(耳下腺、顎下腺など)

唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺などがあります。腫瘍ができたりする場合手術を行います。顔面神経など顔を動かす神経があるので要注意です。

⑥甲状腺手術

甲状腺腫瘍などを扱います。耳鼻科でなくて外科で行うこともあります。

ここで耳の仕組みについて少し説明を。

難聴の種類には伝音難聴、感音難聴があり、それぞれ障害の場所によって分かれています。

⑦人工内耳埋め込み術

先天性難聴の子供や聴力を失ってしまった高齢者などに手術をし、耳のかわりの役割を果たします。

入れたからすぐに聞こえるわけではなく、そこから大変なリハビリも必要なんです。

先天性難聴は小さい時に入れたほうが言語発達がいいと言われていますが、大人になって入れた人も環境音や危険からの回避に役立ったりすることもあります。

⑧鼓室形成術

鼓膜が破れたり、音の伝わり方が悪い方などの手術です。

⑨気管切開 こちらで詳しくまとめています。

他の手術などはまたの機会に。

それでは。

気管カニューレ管理・種類・使い分け

「カニューレって種類たくさんあってわからない!!」

「どう使い分ければいいの?」

 

こんな声をちらほや聞きます。

病棟の看護師さん向けに行ったスライドです。

 

たくさんカニューレの種類があるけど、これは何?とか、風船がついてるけど、これはあったほうがいいの?とか、色々疑問あると思います。

一般の人も、特に研修医の人も難しいんじゃないかなと思います。

大切なことは大きく分けて3つ!!

①カフがあるか

②内筒が入っているか

③側溝があるかどうか

 

それに注意して観察してみて下さい。

下のスライドに詳しく書いてあるので読んで見て下さい。

状態に合わせて気管カニューレを適宜変更していきます。

こんな感じにです。

ではそれぞれを詳しく見ていきましょう。

 

さっきも言いましたが、大切なことは大きく分けて3つ!!

①カフがあるか

②内筒が入っているか

③側溝があるかどうか

カフに関して。

内筒に関して。

側孔に関して。

管理のポイントです。

また気管切開を行うと患者さんにこんなことがおきます。

覚えておいて下さい。

 

それでは。